認知症への覚悟を

認知症の場合、徐々に症状が進んで来ているその変貌ぶりを目の当たりにすることは非常に辛い。

特に認知症の症状の中でも性格の変化は、それまで存在したその人らしさを奪い去っていくようで接していて悲しさと怖さを感じてしまうのである。

 

物忘れや日付が分からないなどは一緒に暮らす中でもまだ介護者や支援者がサポートできる範囲ではある。

しかし怒りやすくなったり、ふとしたことで苛立ちを言動で現すようになると段々と通常のサポートが難しくなってしまう。

また症状の進行とともにトイレの失敗や洋服をスムースに着られないなどの自信への苛立ちや自信喪失が悪感情を更に刺激するようである。

 

病気がそうさせているのだという事は分かっているつもりでも、暴言や高圧的な態度を受けてしまうと一緒に暮らす人たちの精神的なダメージは相当なものとなるだろう。

しかし一方で今までとは変わらない人柄を時に見せられもし、その人との生活に喜びを感じたりもする。

その上下の振幅の中での生活が認知症患者さんとの生活となるのかもしれない。

 

段々と変わっていく性格、言動の中でどう折り合いをつけていくのか悩み耐える日が続くと家族自身も精神的に疲れ果て、それが持病にも(高齢者夫婦の場合)影響しててくるという悪循環が始まるということもある。

 

基本的にこういった性格上の変化、特に怒りやすくなるなどは医師による薬でのコントロールが最も大切。

 

訪問リハビリテーションで療法士ができることは、患者さんの状態の変化を経時的に把握して主治医やケアマネージャーに逐一伝えること。

そうする事で薬の量や種類などの判断材料になるだろうし、他の介護者サービス(家族に休息してもらうためのデイサービス利用など)の検討にもつながるからだ。

 

そして家族の思いや悩みなどにしっかりと耳を傾け、患者さんの今の症状をできるだけ分かりやすく納得できるように説明することも重要となる。

というより認知症という病気を治すことはできない療法士にとってはそれが最も今のある可能な行為だろう。

 

患者さんに対しては、その人の趣味や好きなことなどができるよう訪問リハ時に一緒に行い、その人のストレスを発散させたり満足感や自分への自信を持ってもらうようにする。

 

いずれにしてもこれといった薬や治療法が生まれない現状においては、これから増加していく認知症患者さんとの在宅での生活は容易なものではないという覚悟は必要だ。