介助方法を伝えるのは難しい

訪問している患者さんの介護士から、車椅子やポータブルトイレへの移乗方法などを尋ねられることがある。

 

患者さんが安心して最も楽に移乗できるであろう方法で私は移乗しているので、それを伝えて、患者さんも介護士も同じように安心して楽に移乗できるようになれたらと喜んで「私」の方法を伝えている。

 

ただ、これまでの経験からこのやり取りが無駄になることが少なくないという経験をしたのも事実である。

 

まず、介護士はその時初めて介助という動作をする人ではない。それまで学校やら職場やらたくさんの患者さんの家やらで実践してきた人である。

それ故にその介護士のやり方というものがもうほとんど出来上がってしまっている。そこで、私が行っている介助方法を伝えたところで、「やっぱりやり慣れた方法の方が自分は安心してできる」という人が多い。

そしてそれは私の方でも同様である。

 

もちろん、私も特殊な介助方法などを行っているわけではない。しかし、患者さんの重心の移動を感じたり、それに合わせての力の入れ具合など微妙なところで調整してる。

 

もうひとつが、一手間おけるかどうかである。私の場合、その患者さんに対して一日に何度も移乗するわけではないので、ベッドの高さ調整をしたり、車椅子のフットプレートを外したりなど環境設定に気を配る。一方で、一日で何度も移乗させる要がある介護士になると、その一手間が大きな手間になるようである。

 

私も患者さんはもちろん、介護士にとってもベストな介助方法をなるべく伝えたいのだが、これはひとつの技術でもあるわけで、その技術差を簡単に埋めることは難しいというもどかしさがあるのだ。