老獪な療法士に気をつけろ

現在、訪問看護を行っている事業所は大きく、病院や診療所(とそれらに付属する訪問看護ステーション)、老人保健施設、株式会社がある。

 

そこで厚生労働省がウェブサイトに掲載している資料から現在までの訪問看護事業所に関する数字について眺めてみた。


まずは「訪問看護の実施事業所・医療機関の年次推移」である。


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書かれているように、訪問看護ステーションの数は著しく増加しているが、病院や診療所で実施されている数は減少傾向である。


更に違う資料を見てみる。
厚生労働省が発表している「介護サービス施設・事業所調査」で、訪問看護事業所の経営主体別の事業所の構成比が調べられている。

 


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平成19年、平成24年

 


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平成27年

 

これらから分かることを箇条書きしてみると、

 

  • 医療法人の割合は、42.8% → 36.0% → 30.3% と確実に減少している。社会福祉法人や社団・財団法人も同様に減少傾向である。
  • 一方、営利法人(会社)は、21.0% → 32.6% → 43.9% と増加している。


つまり、病院や診療所に附属する訪問看護ステーションの数も訪問看護サービスも増えるどころか減少の一途であるということである。
この状況は危惧されており、「報酬だけではなく様々な基準も含めて早目に検討するべき」との意見が出ている

 


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この先どういう政策が取られて行くのかは分からないが、これが現状である。

この国の財務状況では株式会社としての訪問看護ステーションがこれから先もどんどん稼いでいくことのができる制度のままというのは考えにくい。介護保険にせよ、医療保険にせよ、その財源は患者の自己負担や保険料だけではなく、税金も投入されているのだ。
しかし訪問看護は国としてもこれからもっとウェイトが置かれていく医療・介護サービスであるし、患者さんにとってもメリットと必要性があるサービスである。

その両方を鑑みながら政策はなされていく。

 

ただ、こういう状況にかこつけて、株式会社としての訪問看護ステーションに勤める人間に、「あなた達の将来はとても暗い。もしかしたら廃業する可能性もある。そうなりたくなかったら、私のプランを参考にしなさい。ただしお金を払ってくださいね」というような趣旨の文章や話をネットや講演会などで言う療法士がいる。

経験年数数十年らしく、酸いも甘いも知っているとのことだ。

 

間違ってもそういう老獪な療法士の不安を煽るような商法に引っかからないようにしたい。

同時にそうい療法士を本当に恥ずかしいと思う。そのためにはまず過去と現状を知って、余計な不安を取り除く必要がある。

 

 思えばリハが疾患別の保険点数になった頃も、そのもっと前の実習生だったころも、これからはリハビリテーション療法士は生き残りの厳しい時代になり、失業する者も増えていくという先輩療法士の言葉を聞いたが、現実はだいぶ違った。

 

確かに少しずつは変化があり、稼ぐために、いろいろしなければならいことがその度に付け加わっていった。

しかし、それは患者さんのために必要なことでもあり、メリットのあることであった。

そしてそういう制度の変化によって、職を失った療法士を今までのところ見たことがないのは事実である。