子どもたちに伝えられること

患者さんと話していて一番盛り上がるのは彼ら・彼女らの孫の話題のときである。
自分の孫の成長や自慢話をするのは楽しいようで、聞いていてこちらも楽しくなる。

この楽しさは、お互いに病気のことや不自由な体のことを一瞬忘れて、これから成長して大人になっていく子どもの将来に思いを向けられることが大きい。

リハビリテーションを受ける人たちはどうしても、高齢者であったり、何らかの疾患をもっていたりと未来に対して不安な気持ちを抱いている人たちが多い。

それに対して、これから育っていく子どもたちはまだ色んな可能性を持っており、どんな学校に行くのか、どんな職業に就くのか、その将来は楽しみに満ちている。

そんな話をしていると、どこかで自分も子どもたちに何か貢献したいという気持ちが出てくる。そしてふと、自分がこの仕事の経験を通して何か伝えられることがあるのだろうか?と考え込んでしまうのだ。別にそんな必要はないのだが、どうしても時々頭をよぎってくるのだ。

筋肉や骨のこと?、手や足の運動のこと?
何があるのだろうか。

そう考えている時に、働き始めた頃に、先輩の療法士から教えてもらったひとつのことを思い出した。

リハビリテーションに関わる療法士が一番専門とすること・すべきことは、障害学だ」

障害学とは、すなわちある疾患から生じる心身の障害についての知識と技術だ。
なぜ動けないのか、なぜその生活動作ができないのか、それらのことを解剖学や生理学、運動学などをベースにして考えて、それらを解決するための手段をもつこと。
それが療法士が専門とすべきことであるということだというのだ。

そして、私が子どもたちを前に何か伝えられることがあるとすると、ベースとなる学問を学ぶことの大切さ、そしてそれを基に自分の前に今ある問題を分解して、それぞれに対して解決する手段を考えるという、考え方なのだろう。

もしいつかそういう機会があったら、それをきちんと伝えられるよう、普段自分が行っていることをしっかりと言語化できるようにしていきたい。