最近気になっている脳のこと

昔こういう話を学校の授業で聞いたことがある。

「それまで紳士的な性格だったある1人の男が事故で頭に深い傷を負った。その傷は脳の前頭葉であった。一命を取り留めたものの、男の性格はその日から大きく変わった。怒りやすく、卑猥な言葉も平気で言うようになった。思ったことはすべて行動や言葉に出した。この男は感情の抑制ができなくなったのだ」。

それから前頭葉にある感情の抑制という機能について説明があった。

そして最近、ふと思うことがあった。「抑制」というのは、「感情」だけでなく「行動」においても重要だと。

例えば、これまで運動をしていなかった人間が健康のため運動を始めようとしたとき。多くが継続できずに失敗する。これは、これまでの生活行動にいったんストップをかけて、新たな行動をスタートするということが出来なかったからである。
他の例では、患者さんと屋外歩行練習を行っている時の話である。道路の横断はいったん立ち止まって、後方から車が来ていないことを確認してから行ってもらうように伝えても、確認なしで斜めに横断してしまう。本人は指摘されて「そうだった」と反省するのだが、ほぼ無意識に行っていたようである。

どうやら人間は一度身についてしまった行動や、現在自分が行っている行為に対して「抑制」をかけるということは、かなり意識的に考えていないと行えないらしい。この「意識しないと」ということが重要である。意識するということは、自分の行為について考えるということである。そのためには体ではなく、頭を使わないといけない。

その代わり一定期間意識しながら繰り返した行為や行動は、今度は強く意識せずとも行えるようになる。この一定期間を面倒くさがらずに継続できるかが鍵となる。このように患者自身が自分自身の行動や行為に意識を向けられるにするのも療法士の仕事である。