運動能力の影響

リハビリテーションを行なっている時、ひとつの目標はある動作が出来るようになることである。それは寝返り、立ち上がり、あるいは歩行であったりする。その動作訓練を行うにあたって、単純に言われた動作を繰り返す人と、動作する毎に何かしら考えて行う人とがいる。

 

例えば立ち上がりの練習をする時、ただ上方向に立とう立とうとする人がいたとする。重心をいったん基底面から外すようにしてもらいたいので、「お辞儀をするようにして立ってみましょう」と動作誘導と一緒に伝えたとする。ある人は単にお辞儀をするだけであるが、中には「ああ、そうすればお尻が浮いてきて立ちやすくなるのが分かってきた」という人もいる。実際のところ繰り返す動作練習の中でで掴んで欲しいのは”お辞儀して立つ”ということではなく、重心を前方に移動させて基底面から外すことで上方向に立つ動作が出来るようになるということである。

 

しかしそういったことを逐一言葉で説明してしても動作に結びつけるのは実際にその動作を行う本人であり、その動作する感覚自体を伝えることは出来ない。だからこそ繰り返して、体に覚えてもらうのである。

 

最近若い患者さんや水泳等が得意だったという高齢患者さんに出会うと彼らが言葉には出さないもののそういった動作する感覚を掴むのが非常に上手いなと感じることが少なからずあった。こういった生まれもっての運動能力というものがリハビリテーションにも影響するようだ。