茹でガエル


現在勤めている訪問看護ステーションは”IT(情報技術)”からは程遠い職場環境である。病院勤務の時はちょうど紙カルテから電子カルテへと移行していった時であり、医師のカルテや指示書も読みやすくなり(紙に書かれていた当時は英語やドイツ語で書かれていることや難解な癖字の解読に悩まされてもしていた)、画像所見や検査データや日々の看護記録もナースステーションに行くことなく読めるようになったことに感動した覚えがある。

 

しかし小さな訪問看護事業所では金銭での制限もあり使えるシステムは最低限のものである。いまだに紙カルテでの運用であり、患者さん宅で記入した後に事務所に戻って再度実施記録等をパソコンで記入するという具合である。また新規の患者さんの情報等はケアマネジャーからFAXで受け取るという始末で、一般的な会社はもちろん病院に比べても歴然と非効率的な運営になっているのが現状である。それでも訪問看護事業所の運営自体は回っており、溜まっていく紙カルテを前にどうしようかと途方に暮れているのが現状維持という状態がこの訪問看護リハビリテーション業界の遅れっぷりを表している。

 

こういう状況があと何年あるいは十数年続くのか分からないが、「最先端技術」や「最先端医療」からは遠く離れた所に存在する医療の世界だという現実である。ただしもしかしたら私たちは”茹でガエル”状態にあるのかもしれないという危機感は職場の誰もが持っている。