国家試験勉強中の学生に伝えたいこと

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インフルエンザの流行が本格的になってきた。医療従事者であるならばほとんどの人間が予防接種を摂取済みだろうが、それでもインフルエンザに罹患することはある。そして最近、気になるのは医療従事者からインフルエンザ予防接種が無駄であるという言葉である。療法士である私の周りにいる医療従事者のほとんどが医師以外、つまりコメディカルと言われる職種の人間である。彼らのほとんどが感染の知識については多くが経験則で身についたものである。専門的な学術知識やデータを知っているわけではない。それは私も同様である。この経験から得られた知識や考察は時に非常に役立つが、一方で大きく間違ってしまうこともある。だからこそ、常に最新かつ専門的な医学的な知識をキャッチアップしていく必要があるのだが、よほど熱心で意識の高いコメディカルを除いてはそれは難しい。

 

経験から正しいと思っていた知識が時に思い込みにすぎず実は誤っていたということは少なくない。それへの反省から「エビデンス」というものが求められるようになった。仕事から得られた経験は日々の臨床でとても大きな力となるが、時におおきな失敗をもたらすことがある。それはたまたまの結果に裏付けされたものにすぎない可能性がある。だから、その経験則は本当に正しいのかを定期的に省みる必要がある。それはなにも医療の世界だけではない。子育てや日々の生活についても同様である。だから私たちは少なくとも患者さんに話す内容は経験則ではなく、もっとも一般的なものを語るべき。それがトンデモなものであるかどうかの判断は今でも学生時代に学んだ「解剖学」、「生理学」などの基礎学問が役立っている。今学生で、国家試験勉強の真最中の人たちにはそれを伝えたい。基礎学問は将来あなた、そして患者さんを救う。