変わってきた「自立」の意味

訪問リハビリテーションではどうしても介護保険に関わらずを得ず、そこでは絶えず「自立を促す」ことが言われる。訪問リハビリテーションの大きな目的も患者さんの「自立」の達成と暗黙のうちにはなっている。

 

さてこの介護保険で使われる「自立」という言葉については恥ずかしながら深くは考えていなかった。食べる・トイレに行く・風呂に入る・着替えをする・歯磨き洗顔をする・自分で行きたいところに移動するなど患者さんが日常生活動作を出来るだけ自分自身の手で行えるようにすることであるとしていた。そして介護費の増大のもと、少しでも介護費を抑制するために「自立支援」を行うことが求められていると思っていた。

 

ところが、こちらのレポートを読む限りどうやらこの当たり前に済ませてきた「自立」という言葉が介護保険の中では変化してきたようである。

 

学識者として制度創設に関わった大森彌氏による書籍でも「自立支援」とは高齢者による自己選択権の現われとし、自己選択を通じて高齢者の尊厳が保たれるとしている。言い換えると、要介護状態になっても自己選択することを「自立」と指摘しており、介護保険法が想定している「自立」とは本来、「治る」
介護や介護保険の「卒業」を意味していなかった。

「治る」介護、介護保険の「卒業」は可能か-改正法に盛り込まれた「自立支援介護」を考える | ニッセイ基礎研究所 より

 

レポート本文がとても分かりやすく書かれており詳しくはそちらを読まれる事をお勧めするが、要するに「どういう介護サービスを受けるか自分自身で決定できるように」支援することがもともとの「自立支援」であった。それが社会情勢(ヒト、カネの不足)により徐々に「介護度を軽くすること」や「介護サービスなしで生活できる」ように支援することが「自立支援」となっていったということである。

 

やむを得ない理由を背景としているは納得できるものの、この変化の歴史から覚えておかなければならないのは、社会情勢によって言葉の意味が都合のいいように変わっていく(変えられていく)可能性があるということである。そしてそれは多くの人に気づかれずに起きているということ。今「当たり前の事」だと思っていることはもしかしたらそういうふうに思わされているだけなのかもしれないのだ。