小説を読んで気付かされる事

リハビリテーションの仕事に関わっていると嫌でも医療保険制度や介護保険の事、そしてこれからの厳しい社会状況(高齢者人口増加、子供の数の減少、そして全体としての人口減少)を知り、意識させられる。それに対して、健康寿命を伸ばし、(ほぼ)一生働き続ける事が必要であり、そのレールから外れる事が人としての価値の低さを示唆するような雰囲気が漂い始めている。

 

確かに健康であり、働きくことは可能な限り続けなければならない状況になっていることは事実だ。しかしそういう考え、価値観だけで生きているといつしか、健康ではない事、働けない事(稼ぎの少ないこと)をネガティブに捉え始めてしまう。少なくとも私にとってそれは窮屈な生き方である。しかし現実はそうならざるを得ない問題で溢れている。

 

そんなある時、ただなんとなくある小説を読みたくなって読んでいて気がついた。そこに書かれている内容は健康、お金、労働、社会といったものは全く出てこない。本当に等身大の人たちの思いや生き方といったものが心情描写細かく書かれていた。読んでいる内にその世界に浸り、世の中で起きている事実のみからでは得られない生き方や価値観を与えてくれた。そして自分がいつしか狭い価値観の中だけで物事を捉えていたことに気づかせてくれた。もちろん小説はフィクションである。しかし時にそのフィクションは自分の生きている世界に染められた考え方を客観的に眺める機会を与えてくれる。

 

私が今考え、思い悩んで、夢中になっている事、世の中そして人生は本当にそれだけなのかと小説は問いかけてくれる。