指が動いた!

訪問リハビリテーションでは数こそ多くはないがリハビリテーション病院退院後も引き続き脳卒中後の上肢や手指のリハビリテーションを行いたいという患者さんがいる。

 

脳卒中後の手のリハビリテーションに関してはどうしても回復が難しい場合が多い。それは足と違って片手でも日常生活を送れること、そのため意識的に使おうとしない限り麻痺した手はそのまま忘れ去れれたものとなるからだ。更に立ったり、歩いたりとは違って運動としてのダイナミックさに欠け、よく患者さんからも「手のリハビリテーションは辛気臭いなぁ」と言われる。要するに地味なのである。

 

それでも続けようとする患者さんには、細かな動作指示は出さず、まずは曲げる伸ばすなど目に見える動きが出るようにリハビリテーションを行う。ただし手のリハビリテーションは疲労の度合いも想像以上に大きいので、休憩を何度も何度も取りながら。そして日常生活でも使えそうな動作を見つけてそれを無理のない範囲で行なってもらう。更に一人で出来そうな自主練習課題があればそれも朝晩まずは数回で良いので行なってもらうようにしている。このように手のリハビリテーションでは、訪問リハビリテーション、日々の生活、毎日の自主練習の繰り返しが必要となる。まずは運動の絶対量の不足を解消することを主としている。

 

それでも回復は非常にゆっくりとしたものである。療法士から諦める訳には絶対にいかないのだが、それでもやっぱり回復は厳しいかなと思ってしまうこともある。しかしそのような中である日患者さんから「ほら、見て!」と今まで動かなかった指を動かすのを見せてられた時は患者さんと共に喜ぶ。そしてその動きをどうすればまた新たな生活動作に活かせるを考え、リハビリテーションの中で取り入れる。

 

「立てた!」、「歩けた!」と同様に「指が動いた!」というのはある種感動的な言葉であり、ひとつの成果が出た瞬間でもある。それを、「で、どんな日常生活動作が出来るようになったの?FIMやバーサルインデックで何点上がったの?」と聞いたところで虚しい。リハビリテーションでの回復や改善は点数で表せない側面も持つのだから。