自主練習を禁じる療法士もいるがそれで本当に良いのか?

脳卒中の患者さんの訪問リハビリテーションを行っていると、病院からのリハビリテーションサマリーに時々こう書かれている事がある。

 

「○○さんは筋緊張が高まってしまう傾向があるので、自主練習を頑張り過ぎないように伝えてます」

 

こういう類の事を言う療法士は私が学生の時からいて、現在でも普通にいる。しかし筋緊張が高まる、すなわち余計な力が不必要な筋肉にも入ってしまうことは、筋力の弱まっている筋肉を動かす場合には当たり前の反応である。私たちも大きな負荷をかけて筋力トレーニングすれば自然に他の筋肉も過剰な力が入ってしまうことは経験出来る。

 

つまり筋緊張が高まってしまうから筋力改善目的の自主練習は行うなということは、人間の自然な反応を全く無視した言葉ということだ。

 

筋肉から余分な力が抜けるのは、その筋肉の拮抗筋(曲げる筋肉の拮抗筋は伸ばす筋肉)に力が入っている時、その筋肉自体に十分力が入った後、もう一つは反回抑制という複雑な仕組みの3つの場合である。したがって筋力改善訓練自体で力が入った筋肉は生理現象として徐々に緩む。こういったことを無視したアドバイスは無意味であり、自主練習という貴重な機会を奪うことになりかねない。