もつれた人間関係を解いていく

訪問リハビリテーションに行っていると、その患者さんに生じている問題が患者さんの心身だけの問題ではないことがある。患者さんと同じ環境に存在する多くの人たちが更に患者さんの問題を解きにくくしている。

 

私たちは通常、職場、家庭、学校に属し、その中で親、兄弟姉妹、仕事仲間、友人、先生などとの関係性の中で生きている。患者さんなら更に病院で主治医、訪問サービスで療法士や看護師などもそこに加わる。

 

これらの人たちが上手く噛み合えば、そこに所属する患者さんの問題も少しづつ解決でき、良い人生を生きて行くことが出来る。しかし患者さんに関わる人たちの足並みが合わず、お互いが勝手な方向へと患者さんを引っ張って行くと問題解決のために前に進めるどころか、いったいどこに行こうとしているのかもはっきりしなくなり、患者さんの抱える問題は複雑に絡まっていくばかりになる。

 

特に所属する世界の多い患者さん程その事が問題になっていく。各専門職が自身の出来るサービスをしっかり提供することは重要である。しかしそれが意味を成してくるのは、問題を解くための方向がはっきりとし始めた状況である。専門バカとはその方向をはっきりとさせずに、ただひたすら自分の仕事だけを作業的に行う人たちである。

 

したがって、大きな問題を抱えている時にこそ、それぞれの人たちに方向性を確実に示せるように働きかけることの出来るコミュニケーション力、人間関係力、政治力、忍耐力といったトータルな頭の働きが必要になる。専門知識や技術よりももっと先に必要で、もっと重要なことである。しかし悲しいことに患者さんを囲む多くの人たちは何らかの専門職でありプライドが高い。全員の目指すべき方向を見つけのはそう簡単ではない。