「抗命権」というものがあるらしい

辞めていくスタッフ

訪問看護ステーションという小さな職場においても意思伝達というのはなかなか上手くいきません。経営者や上司の意図が正確に伝わらず、辞めていくスタッフも少なくありませんでした。

 

問題は日本独特のコミュニケーション

しかしこれはどうも私の勤める職場の問題というよりは、日本の社会そのものの慣習が背景にあり、多くの職場で意思伝達が正確に伝わらないということが起きているようです。最近でも誰もが知る有名企業で不正なことが行われて表沙汰になり、現場で起きていることを本部側で把握していなかったことがその釈明として述べられているのをよく耳にします。恐らく現場の方では「そういう指示を出していたのは本部の側でしょ!」という気持ちの人も少なくないはずです。本部と現場との意思伝達に問題が起きていた、もっと具体的に言うと意思伝達の内容にたくさんの曖昧さがあったのでそれを各自が都合のいいように解釈して行動していたということです。昨年から政治の問題で耳にするようになった「忖度」という言葉も、「いちいち全部を言わないでも、こちら側の思いを察しろ」という日本にありがちがコミュニケーションの問題から生じています。

 

上司からの命令は絶対なのか?

私たち訪問看護ステーションで働く人間も経営者と比べるとその立場は弱く、経営者から管理者、管理者から現場の人間へとあいまいな指示が出てくると、その背後にある経営者が望むものを察し、盲目的に行動してしまいかねません。現に私のこれまでの経験の中では、経営者から管理者へ、そして管理者から現場の人間へと退職勧告のようなものが出され、泣く泣く辞めていった同僚もいます。もちろん、労働基準監督署などに訴え出れば不当な解雇として訴えることもできたのでしょうが、その同僚はそうするだけの気力も失せるほど失望し、素直に辞めていきました。もちろん専門職であるということから、直ぐに次の職場を探せるということがあったのも事実ですが、見ていて気の毒でした。この他にも仕事上での指示でそれは果たして正しいことなのか?と悩んでしまう人たちも一方で、上司からの命令は絶対的なものとして素直にしたがう人もいます。

 

間違っていると思える指示に反論することができるように

どちらが正しい、正しくないというをここでは問題にしていません。経営者、管理者、上司からの指示に対して、それが正しいのかどうなのかというグレーゾーンで、「私はそれは違うのではないかと思います」と言える状況が日本にはもっと必要だということです。ドイツには「抗命権」というものが兵士にはあるそうです。人道に反するような命令にはそれは間違っていると抵抗する権利があるようです。その分個人個人も指示内容に問題はないかどうかを自分自身で考える必要性が出てきます。しかし「忖度」といった行動が誤った方向へいかないように、命令に抗う行動というのはコミュニケーションを取るにあたって必要だと思います。