嬉しいこと悲しいことも一緒に
患者さんにとってのリハビリテーションでの効果の捉え方は千差万別である。
右上肢と手指に大きな運動麻痺がある2人の患者さんを担当したことがある。
いずれの方もリハ病気から退院後の訪問リハであった。
本当に少しずつではあるが、握ったり離したりなどの手指の動きが徐々に出来るようになった。
その手指を使って今できる日常生活動作や家事を練習し、普段でも少しでいいからやってみてもらうように伝えた。
ひとりの患者さんは右手を使って出来た事をとても喜びながら伝えてくれた。
もうひとりの患者さんは、そんな事が出来るより病気の前と同じように手を動かせるようになりたいのだと泣きながら訴えた。
私はどちらも患者さんの気持ちとしては納得出来るように思えた。
喜びを伝えてくれた患者さんも本当は病前と同じように動かしたいと思っているだろう。
だからそれ以来、私は安易には何かが出来るようになったと言わないようにしている。
患者さん自らがリハ中に、ああこんな動きが出来るようになったんだと思い、それを口にしてくれるのを注意して聞いている。
その時に初めて、前はどんな運動ができず、今はどんな運動ができるようになったのかを説明している。
たとえ療法士といえども他人から強引な感じで良くなったと言われても、自分の感覚と違う場合はどこが良くなった?と反発してしまうかもしれない。
それよりも患者さんから自分で少しでも良くなったと実感してもらいたいのだ。
そうすると、このままリハを続けて、今度はこうなろうという次の気持ちが出てくると思う。
患者さんが悲しいときは側で彼らをサポートし続け、嬉しい時には一緒に喜べるよう謙虚であり続けないと、その関係が数年にも続くかもしれない訪問ではやっていけない。
山あり谷ありがずっと続くと思ってください。