手のリハビリテーションと自主練習と日常生活

脳卒中後のリハビリテーションの中でも手のリハビリテーションはなかなか上手く行くことがない。訪問リハビリテーションの時間だけでは時間が絶対的に少なすぎる。だから自主練習課題を必ずこなしてもらうようにしている。しかしそれでもまだまだ麻痺した手を動かす時間が少ない。これが足ならば場合は違ってくる。立つにしても、歩くにしても否応なく麻痺した足を使う機会はある。その繰り返しが効果的である。

 

しかし手の場合は片手でも生活動作などはできてしまう。リハビリテーション病院ではこれでもかというくらいに片手での日常生活動作訓練を行って、自宅へと戻ってくる。そこで自主練習以外にもなるべく日常生活で麻痺した手を使ってもらうようにお願いしている。調理、洗濯、掃除などどんなふうに麻痺した手を使えるかを確認し、それを行ってもらう。

 

ここで二通りの患者さんに分かれる。日常生活の中で麻痺した手をしっかりと使うようにしてくれる人と、まだまだ使える手ではないと全く使おうとしない人である。その人たちの間では運動機能に多少の差は出て来るが、それ以上に前者の人の方が生活の中でこんなふうに手を使えるようになってきたと喜び一層前向きに楽しく生きているようである。

 

脳卒中の運動麻痺では脳の損傷自体が及ぼす影響はもちろん大きいが、その他にも「学習性不使用」という言葉で表されるように、使わないことによってますます使えない手と成っていく影響も軽視出来ない。患者さんにとっては酷ではあるが、脳卒中後の手のリハビリテーションは本当に長く険しい道である。