現実を知る

テレビや新聞のニュースで「〜病に希望。新薬の開発・・・云々」というのはたまに見聞きする。

私自身はすごいな、実現すればいいなと思うものの、そのほとんどがだいぶ先(10年以上先)の話なんだろうなとそのままスルーしてしまう。

 

ところが、患者さんの中にはそれに希望をもって、あと数年もすれば今の病気や障害が治る時が来るんだと思ってしまう方も少なくない。

実際、リハビリテーション中にそういう話になった時、私は「そうですね、早く実現すればいいですね」というような対応をしている。私自身が知識不足なだけで、本当はもっと早い進歩で薬の開発がすすんでいるのかもしれないとも思うからだ。

もうひとつ、リハビリテーションは長期に及ぶ。特に著しい回復段階を過ぎた患者さんを対象にする訪問リハでは。

そのため、途中何度も何度も「もう、リハビリ止めようかな」と思う時が来だろうし、それを支えるためには、希望が必要となる。

 

一方で、患者さんはどこかでどこまで回復の可能性があるのか現実を知っている方が良い場合がある。病前とまったく同じ体に戻ろうと始めのうちはがんばってリハビリテーションを行うが、その回復は遅々として、時間が経つとともに自分の思いとかけ離れていく一方ではどこかで、リハビリテーションへの動機がプツンとちぎれ、そのまま終了となってしまうことがある。

ここまでは回復できると分かればそこまではリハビリテーションを継続でき、そこから先はまた違った生き方を選択することができる。

ただし、それは私達療法士から聞くのではなく、主治医からはっきりと聞いたときの方が受け入れが上手くいくことが多いのがこれまでの経験だ。

 

したがって患者さんの希望が遠い将来の医学の進歩であっても、リハによって少しずつ回復していく先の未来の自分の姿であってもいい。療法士は、患者さん自身が何か希望になるものを見つけられたのなら、それと現実との橋渡しをできるようなコミュニケーションと運動療法などのサービスが訪問リハビリテーションの場では大切となってくる。