理想だけでは成り立たない

訪問リハビリテーション訪問看護を取り巻く環境はお世辞にも良いとは言えない。一番大きいのは人材不足だろう。国は在宅医療の方向性を定めているが、それを支える人材が今の状況では増えることはない。

 

看護師は病院でさえも慢性的な人材不足である。その看護師が労働環境としてはデメリットの方が多い(天候、移動、一人仕事など)訪問を選ぶのは、夜勤がない(24時間対応ならまた話は違ってくる)、休日が定まっているという労働条件があるから。もっと人材を集めたいと言うのなら、もう賃金面しかないだろう。しかし国の医療や介護に注げる財源はこれから先は減るしかないのは明らか。私自身も現在訪問リハビリテーションサービスをしていて、その中で”在宅医療”というものに並々ならない熱意を持っている看護師や療法士にも出会うことがある。それでもその数は限定されたもの。

 

一緒に働いてきた看護師の多くが、とりわけ高い熱意を持っている訳ではないのは職場への愚痴の中で散々聞いてきた。能力があって、意欲的な人材は給与や労働環境が少しでも良い方を択ぶのは当然の事である。働ければ有り難い、長時間労働も低賃金も仕方がない、というような旧来の仕事感は特に専門的な知識と技術を持っている職種から消え始めている。そしてそれは労働者側からしたら理想的な流れ。長時間労働サービス残業、低賃金、過労死などのニュースが出ない日はない。

 

理想や熱意も仕事を支える力とはなる。しかしそれ以上にフツーの人間にとっては、今日、明日を生きていくためのお金やそれを得るための労働環境の方が比較にならないほど重要なのだ。それがないのならなんのためらいもなく、多くの人は訪問サービスからは立ち去る。