コミュニケーション能力の問題〜患者さんの場合

コミュニケーションが重要ということは誰もが日々の生活の中で嫌と言うほど実感することだ。それが自分自身のことであれば、書いたり話したり、聞いたり読んだりという様々な方法で工夫する努力は少なくともできる。しかし訪問リハビリテーションでは、コミュニケーションに問題を抱えているのは自分自身や他職種ではなく、患者さんであることも多い。

 

患者さんのコミュニケーションにおける問題で大変なのは、何らかの疾患により脳の機能自体に問題があることだ。例えば脳血管疾患では失語というものがあるし、発達障害の患者さんの中には簡単な会話は可能だが少し複雑な内容になると混乱してしまい理解することが難しいということもある。この場合本人との直接のやりとりはもちろん、第三者から言われたことをこちら側が聞いて理解することにも問題が出てくる。

 

まず患者さんが第三者から「○○と言われましたが、どうなんでしょうか?」という相談があった場合、私たちはその「○○」が本当なのかどうかを確認する必要がある。またコミュニケーションの難しい点でもあるのだが、どういう文脈のなかで「○○」と言われたのかもまた非常に重要となる。患者さんには医療や福祉の協力が必要であるのだが、コミュニケーションに問題を抱える場合にはその協力を阻害する方向に進んでしまうことがあるのは、上記のようなことが発端になるからだ。いったい何が真実なのかが患者さんを通して確認しようとすればするほど分からなくなる。

 

一番の対応策としては、患者さんとその関係者が一同に集まって話し合えばよいのだが、在宅でのサービスでは距離的、時間的にそれはできて月に一度程度である。事あるごとに集まるということは不可能に近い。そのため関係者がお互いに「○○」と言ったのことの真偽が分からないまま疑心暗鬼となり、良好な協力体制が取れなくなる危険性が常にある。

 

患者さんが助けを必要としているのは事実である。しかし患者さんがもつコミュニケーションの問題がそれを進展させないことが起こる。社会生活を送っていくためにコミュケーション能力というものがいかに重要かを実感させられる。それでもいろいろと手を尽くすべきなのは言うまでもない。